謡う鯨

映画やドラマを観たり芸術について考えたり書籍やコスメを爆買いしたりする。SF小説が好き。美術館や博物館にしばしば出現します。

映画【箪笥】 時系列と事実関係まとめ(書き途中)

箪笥〈たんす〉

監督:キム・ジウン
製作:2013年

 

ホラー映画として紹介されることが多い作品ですが、怪奇描写に加え時系列がバラバラに進むため、サスペンス、ミステリ的な謎解きも多い作品だとおもいます。主人公スミは『信用できない語り部』と言えるため初見だと「???」となったのですが、わかりやすいまとめページがなかったので、自分用に登場人物、時系列と事実関係をまとめてみました。
※折りたたみ以後のページはネタバレを多分に含みます。視聴後に読むことをお勧めします。

 

【登場人物】

[開始時存命]
 ・スミ
 ・父
 ・小鳥
 ・ウンジュ(白衣、ナース着、スーツ、黒い服。看護師?)

※実在するウンジュ→家族写真の中に混ざった白衣のウンジュ、はじまりの事件以前に家に訪れスミと言い争う黒ハイネックのウンジュ、スーツで現れるウンジュ

[死亡]
 ・悪夢の少女たち(怨霊①)
 ・母(怨霊②)
 ・スヨン(怨霊③)
死亡した人物は怨霊や悪夢として登場します。
また、同じ名前と顔であっても、妄想の症状が悪化したスミが(それと気づかず)演じている人物がいます。

[スミの妄想(別人格)]
 ・ウンジュ(継母)
 ・スヨン(退院以降)
※スミが演じている時の特徴。→向精神薬を手渡されるウンジュ。スミ、スヨン、ウンジュの生理が同じ日に来る。スミにしか話しかけない父親…

 

【時系列順】

・4人家族が郊外の邸宅で暮らしている【パーティーの写真】
・母、病気になる。(写真やウンジュが訪れた時点ですでに顔色がやや良くなかったので、すでに発症していた可能性もある。また、後述の薬瓶の描写からも精神疾患だったと考えられる。スミが違う現実を見ていたように、母にとってはウンジュが自殺の動機のひとつになった可能性は残る)
・ウンジュが家に招待される。心なしか表情が暗い母。スミ、会食の席で中座。スヨンにあたる看護師ウンジュ。スヨンを慰める母。
スヨンの部屋の箪笥の中で母が自殺。倒れる薬瓶。箪笥が倒れ、巻き込まれるスヨン。看護師ウンジュ、ミヒ(ソンギュ妻)、父、スミ、が物音に気づく。
・看護師ウンジュ、2階に行くが、まだ生きて助けを求めるスヨンに背を向ける。戻ろうとするがスミと遭遇。
・スミはウンジュと父の関係を疑っている。スミ「頼むから家族のことに関わらないで」 ウンジュ「お前はこの瞬間を一生後悔するかも」
・ウンジュを避け出かけるスミ。家を振り返るが戻ることはなく、看護師ウンジュも助けなかったため、スヨンそのまま死亡。
・スミ、精神に異常をきたし入院。
・スミ、退院。【オープニングシークエンス】(後述の継母ウンジュの服が同じものばかりのことを加味すると、入退院を繰り返している可能性あり)
・スミが家に戻る。実際に家に帰ってきたのはスミと父のみ。
・桟橋に行くスミと妄想スヨン。→妄想。同乗するスヨン、継母との会話はスミの頭の中でのみ起きている。
・時計の時間合わせ(やり直しのメタファー?)
・同じ服ばかりの継母ウンジュのクローゼット(後述のシーンで服が変わっていなかったのをみると、嫌な女のキャラクターとしてのウンジュ、繰り返しのメタファー)
・電話する父(実在ウンジュに電話)
・スミ、妄想スヨン、妄想ソンギュ、父の食事。→事実&妄想。実際に父に話しかけているのはスミだが、父に妄想人格は見えていないのでソンギュの語り掛けに父はまとも取り合わない。 薬を手渡される妄想ソンギュ。→実際に渡されているのはスミ。
・籠の鳥(そのまま暗喩。スミは後悔から抜け出したくても抜け出せない。)
・妄想スヨンの部屋の扉が開き、いきなりスミのベッドの中にいるスヨン。「箪笥がこわい?」
・継母との会話。水を飲むスミが血まみれの指のようなものをみつける。
・スミの悪夢(過去の住人の怨霊。)原作、『薔花紅蓮伝』のオマージュ。指の怪異の正体?
・黒い人影→怨霊②(母の怨霊)
・妄想スヨン、継母、スミに同時に生理が来る。→妄想&現実。スミに生理がきた
・スミの体調をしつこく気にする父親(退院したものの妄想が出ているため)と、箪笥を片付けて欲しがるスミ、「片付けないと約束した」という父。
・竹林を歩くスミ、気配を感じる(『薔花紅蓮伝』オマージュの姉妹の怨念?)→怨霊①

・スミ、鳥をひねり殺す→事実
・鳥が死んでいることに気づく妄想スヨン。→妄想&事実。実際は妄想状態のスミが死んだ鳥を発見。誰かの気配→怨霊?

・母の遺品の写真を眺めるスミ。家族写真の中にウンジュ登場(白衣、看護師ウンジュ以外は妄想の可能性が高い。また、4人の家族写真の時点で母の顔色がどことなく悪い。家族写真に無理やり合成されたようなウンジュ)→事実&妄想

・遺品や写真をもらう妄想スヨン→妄想
・継母ウンジュ「悪さをしたら罰を受けるのは当然」「まだ病気が治ってなかったの?」→スミの妄想。後悔や罪悪感、病気ということで取り合ってもらえないもどかしさを持ち続けているスミからスミ自身への言葉とも言える。
・スミ「汚い手で触らないで」→妄想?スミは父の不貞で母が自殺したと考えている。(が、おそらくは母の具合が良くないので父が看護師であるウンジュを呼んでいた?ただし、スミの目に看護師ウンジュはよく映らなかったし、実際折り合いも悪かった。)
・やたらハイテンションな継母ウンジュ、父とソンギュ夫妻の会食。継母ウンジュを演じるスミは躁状態。「覚えていない」「そんな記憶はない」と言われ、「どうして?」と問う。→事実。実際にはスミの記憶だからだと思われる。
・ミヒ(ソンギュ妻)の発作→怨霊(?)ミヒを見て過呼吸、叫ぶ継母ウンジュ→事実だが実際はスミ
・ミヒが見た流し台の下の血に塗れた少女→怨霊③(箪笥に潰されたスヨンの怨霊)
・流し台の下の少女(スヨンの怨霊)と遭遇する継母ウンジュ。(写真のスヨンと同じ緑色のドレスを着ている)→怨霊③
・薬を渡される継母ウンジュ→事実
・流し台の扉が開いている→怨霊③ 鳥が死んでいることに気づく父→事実、スヨンの仕業 鳥の死を知る継母ウンジュ→妄想
・継母ウンジュ、妄想スヨンの部屋に侵入。自分が切り取られ塗りつぶされた写真を見て激昂。鳥の死体がスヨンのベッドに移動。箪笥で折檻→妄想

・父、鳥を埋め、スミを問い詰める。父と話さない妄想スヨン。「スヨンは死んだ」→事実。父にスヨンは見えていない  

・電話する父。「お手上げだ」。相手は看護師ウンジュ
・血まみれの袋を引きずる継母ウンジュ。ゴルフクラブでタコ殴り。→妄想&事実(妄想状態のスミの行動。袋の中身は人形。回想でスミver登場) 

・フレームが割れた緑のドレスのスヨンの写真。床を叩く手(スヨン)。→事実。過去に起きたこと。下敷きになり死んだことを示す。
スヨンのが呼ぶ声を聞くスミ。床の血の跡。→妄想
・開かない袋。見つからない鋏。→事実 薬を飲む継母ウンジュと継母ウンジュの服を着たスミ。→妄想。実際に薬を飲んでいるのはスミ

・やかんをもって迫る継母ウンジュとスミの取っ組み合い。刺される継母ウンジュ。→妄想 スミ倒れる。→事実
・継母ウンジュに引きずられるスミ。→妄想 
・継母ウンジュとスミの会話。→妄想。スミからスミへの言葉と言える。
・石膏像で殴られるスミ→妄想&事実。石膏像に実際にぶつかっている。
・スミを父が発見。→事実

・割れた薬棚と緑の薬瓶(緑色は精神疾患のメタファーとして使われることがある)。人形(袋の中身)
・薬を渡される継母ウンジュ→妄想&事実。実際に渡されているのはスミ
・継母ウンジュ(スミ)とスーツ姿の看護師ウンジュ(本人)の邂逅
・スミ、継母ウンジュだと思っていたのは自分自身だったと気づく。スミ、薬を飲む
・スミ、再び入院。看護師ウンジュの手を離さないスミ看護師ウンジュ力づくで剥がす。

スヨンの名を口にするスミ
・看護師スミがダイニングに座っていると、口笛が聞こえる。2階に上がる足跡が血で濡れ、寒さに震えるスミ。→怪異③
・病室で涙を流すスミ